ISO50001発行の背景

エネルギーマネジメントシステムが国際規格化された背景には、世界規模でのエネルギー消費と二酸化炭素排出量の増大、それを受けて、各国が様々なエネルギーマネジメントに関する法規制やガイドラインを発行したことがあります。

●エネルギー消費の問題について
世界の工業によるエネルギー消費については、近年、特に中国などのアジ化各国の消費量が劇的増加していることが注目されており、IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)が発表した統計によれば、2010年8月に、今迄、エネルギー消費の最大国であった米国を抜いて中国が世界一になったとのことです。

またIEAによると、中国のエネルギー需要は、近年、驚異的で、2000 年以降のエネルギー消費量は2倍にもなっていますが、この急速な需要の伸びにもかかわらず、中国の1人あたりのエネルギー消費量は、今もなお、先進工業国の平均の約1/3 に過ぎず、このように一人あたりのエネルギー消費量が低いことや、地球上で最も人口の多い国家であることを考慮すると、「今後さらに目覚ましい伸びが見込まれる」とIEAは結論づけており、今後のエネルギー問題においても脅威となっています。

●各国の法規制について
 上記のような状況の中において、各国では様々なエネルギーマネジメントに関する法規制やガイドラインを発行しています。
例えば、米国では「エネルギー政策基本法2005」や「RGGI(Regional Greenhouse Gas Initiative:地球温室効果ガス・イニシアチブ)」、英国では「気候変動税と気候変動協定」、「EU ETS(EU Emission Trading Scheme:EU排出権取引制度)」などです。

 アジアの中においては、日本が最も早く、1970年代の2度に渡るオイルショックを契機として、1979年に「省エネルギー法(エネルギー使用の合理化に関する法律)」が制定されています。
 制定当初は、エネルギーが不足した際の対策として、有効利用と使用の合理化に主眼が置かれていましたが、近年では地球温暖化対策としての重要な法律となっています。
 また2010年4月から「改正省エネルギー法」が施行されたことにより、従来よりも届出の対象となる事業者の範囲が広がるとともに、届出対象外の事業者に対しても、省エネルギー対策に取り組む努力義務を定めています。

その他、アジアにおいては、インドが2001年に「省エネルギー法」を、またエネルギー消費量世界一となった中国では、2007年に「省エネルギー法」を制定しています。

●各国のエネルギーマネジメント規格について
法規制とは別に各国では様々なエネルギーマネジメントに関する規格を発行しています。米国では、2005年に、ISO50001の規格原案として提案された「ANSI/MSE2000:2005」が発行されています。EU各国では、CEN(欧州標準化委員会)が発行した「EN16001:2009」を採用しています。
アジアを見てみると、中国では「GB/T23331:2009」、韓国では「KSA4000:2007」を発行しています。

●サステナビリティ、CSRに関する関心の高まり
サステナビリティ(sustainability:持続可能性)とは、文明の利器を用いた人間活動が、将来にわたって持続できるかどうかを表す概念ですが、地球環境問題がより深刻化していく中、エネルギーの持続可能性に関する関心が非常に高まっています。

具体的な企業活動の例として、大企業、上場企業を中心に「環境・CSR/サステナビリティ」に関する情報開示を適切に行うことの重要性が近年、ますます高まっていますが、今後は、大企業だけでなく、事業活動をする企業全てが、サステナビリティ、CSRの観点から、エネルギー問題に積極的に取り組んで行く必要性があり、そのようなことからも、エネルギーマネジメントに特化したISO50001の活用は、重要な位置付けとなっています。 

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